最適な生産技術を追い求めた試行錯誤

アスタキサンチンの製造において、当社独自の完全屋内バイオリアクター方式にたどり着くまでには、結果的に様々な試行錯誤を続けなければならず、その道のりは決して平坦ではありませんでした。現在当社が採用している完全屋内バイオリアクター方式の技術は、いわば20年以上にわたる研究と試行錯誤の結果を体系化したものです。
最適な栽培方法を探す長い道のり

最適な栽培方法を探す長い道のり

ヘマトコッカス藻は、淡水性単細胞緑藻類の一種で、自然界に普遍的に存在する生物です。ヘマトコッカス藻が好む生育環境では、運動性細胞として成長します。ところが栄養の欠乏や紫外線などによる好ましくない環境下では、運動性を失い、細胞壁を厚くして休眠状態に入ります。この時アスタキサンチンを生成して赤くなります。このアスタキサンチンは、ヘマトコッカス藻が過酷な環境下で長期間生存するために必要な栄養素として機能します。一見単純そうな藻の培養ですが、殊にヘマトコッカス藻培養には、最適な育種の選抜、最適な装置の選択、それらを使うタイミング、光や栄養などの条件を満たす必要があり、生育期間も長くかかりますます。そのため他の微細藻類と比べても、大量培養は格段に難しいのです。

ヘマトコッカス藻の培養方法は1990年代当時まだ確立されておらず、トライアンドエラーを繰り返す状態でした。方法を模索するなかで先ず行きあたったのは、当時静岡県三島市にあったバイオベンチャーのマイクロガイア社でした。同社は画期的な培養能力を持ったバイオドームという半球形の装置を使って藻類を培養しており、アスタキサンチンの原料藻であるヘマトコッカス藻培養にも応用できると考えたためです。そこで1998年から99年にかけて天然アスタキサンチンのパイロット生産を試みました。ところがこの地はヘマトコッカス藻を培養するのに十分な環境を満たしてはいないことが分かり、新たな培養地を求めることになりました。

バイオリアクター方式による安全・高品質な製品

バイオリアクター方式による安全・高品質な製品

パイロット生産で得た経験から、屋外で量産するには1年を通じての日照量が十分であること、気温がヘマトコッカス藻育成に適した範囲であること、そして藻の培養に欠かせない水が豊富な環境が必要であることが分かりました。適した環境を求め、日本だけでなくその範囲を世界に広げ、次に目を付けた先はハワイのマウイ島でした。そして2001年、20エーカーという広大な土地にバイオドームを1,000基設置し、ようやく培養を開始しました。こうして天然アスタキサンチンの量産に成功したことは、同じようにヘマトコッカス藻によるアスタキサンチンの生産・販売に参入する企業が複数出るほどに業界にインパクトを与えました。ただし現在も生産を続けている企業はごくわずかであることからも、この事業を続けることは経営的にも技術的にも容易ではないことは想像に難くないでしょう。

マウイ島での培養が順調である中でも、研究者や同業他社とも交流を深めながら、藻の培養に最適な環境づくりに関する研究は続けられていました。そこで出会ったのが、バイオリアクター方式での培養方法でした。ヘマトコッカス藻がその細胞内にアスタキサンチンを蓄積させる方式には、マウイ島に設置していたドーム型のほかに、オープンポンド方式(屋外の大きな池で培養する方式)、チューブラー方式(直径5cm~10cm程度のガラス管中で培養する方式)等様々あります。それぞれに特長がありますが、細胞内のアスタキサンチン含量にばらつきが出たり、設備の洗浄や維持に手間がかかったりします。

特に屋外培養では日照時間や気温といった気象の影響を直接受け、安定的な生産を維持することは容易ではありません。一方、高い生産安定性を保ち、衛生面も優れており、品質の高いアスタキサンチンを生産できる方式こそ、屋内で人工光を用いて培養する方式、バイオリアクター方式です。当社は1994年に世界で初めてこの方式で商業生産を成功させて以降、現在も米国とスウェーデンの工場でこの方式を採用し、安全性に優れ、高品質な製品を安定供給するよう努めています。

栄養科学と独自のノウハウと共に
アスタキサンチンを世界に届けています。
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